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緑区の農地は307.4ヘクタールで市内4位。畑は生活圏の内側にある


この記事が答えること

横浜市緑区に農地がどれだけあり、18区のどこに位置するかを、市の公式集計で示す。市民の森やふれあいの樹林、市民農園、生産緑地地区といった制度の公式名称と数値を確認する。あわせて農地・農家の推移と、都市の農地を支える国の法制度を整理する。

緑区の農地は307.4ヘクタール、市内18区で4番目

横浜市緑区の農地面積は307.4ヘクタールである。横浜市が「令和2年1月1日固定資産概要調書」に基づいてまとめた行政区別の集計値で、市全体の農地面積2,850.2ヘクタールのおよそ1割にあたる。

18区のなかでの位置は4番目である。多い順に泉区414.2ヘクタール、都筑区343.4ヘクタール、青葉区313.5ヘクタール、そして緑区307.4ヘクタールと続く。以下は戸塚区281.0ヘクタール、旭区271.6ヘクタール、瀬谷区225.1ヘクタール、港北区206.5ヘクタールである。一方で西区は0ヘクタール、中区は0.1ヘクタール、南区は1.9ヘクタールにとどまる。市内の農地は特定の区に強く偏って分布している。

区名に「緑」がつくため、緑区が市内で最も農地の多い区だと受け取られることがある。実際には4番目であり、1位は泉区である。もっとも、4番目は十分に上位である。徒歩や自転車で行ける範囲に畑や樹園地があるという生活実感は、統計の上でも裏づけがある。

農地面積と経営耕地面積は同じ数字ではない

農地の数字を読むときは、出典の違いを見落とすと混乱する。上に挙げた307.4ヘクタールは、市が固定資産の台帳をもとに作成する「固定資産概要調書」による農地面積である。これに対して農林水産省の農林業センサスが集計するのは「経営耕地面積」で、農業経営体が実際に経営している耕地を指す。調査主体も基準時点も定義も違うため、同じ「緑区の田」を指しても数字は一致しない。実際、市の集計と区の公式資料では、緑区の田の面積として異なる値が示されている。

一致するのは順位の傾向である。緑区の田は、固定資産概要調書に基づく市の集計でも、2020年農林業センサスに基づく区の資料でも、市内2番目に多いとされている。どの統計で何を数えているかを確かめてから比べるのが、農業統計の扱い方である。

なお、これらの資料の作成部署名にも注意がいる。かつての「環境創造局」は令和6年度の組織改革で再編され、現在の所管はみどり環境局である。市の農政・地産地消はみどり環境局農政推進課および農業振興課が、緑区を含む北部8区の窓口は北部農政事務所が担っている。古い資料には旧局名が残るため、名称で検索すると行き止まりになることがある。

農家は平成27年3,451戸から令和2年3,056戸へ減った

横浜市の総農家数は、平成27年(2015年)の3,451戸から、令和2年(2020年)には3,056戸になった。いずれも農林業センサスによる値で、5年間の単純な差は395戸である。令和2年の内訳は、販売農家が1,770戸である。

農地面積も長期的に減少している。横浜市は「横浜都市農業推進プラン2024-2028」で、市の農地が昭和54年ごろの約5,000ヘクタール規模から、現在は3,000ヘクタールを下回る水準まで減ったとしている。減少幅が大きいのは市街化区域内の農地で、市街化調整区域の農地は緩やかな減少にとどまる。緑区の農地の多くも市街化調整区域にある。

減っているという事実は、農家の努力不足を意味しない。相続や後継、都市計画上の位置づけといった、個々の経営の外側にある条件が効いている。だからこそ、次に述べる法制度が用意されている。

市民の森とふれあいの樹林が緑区に5か所

緑区で公開されている「市民の森」「ふれあいの樹林」は5か所である。内訳は三保市民の森、新治市民の森、鴨居原市民の森、長津田宿市民の森、そして上山ふれあいの樹林である。このうち三保市民の森は39.7ヘクタール、上山ふれあいの樹林は1.3ヘクタールである。

市民の森は横浜市独自の制度で、「緑の環境をつくり育てる条例」第7条と「横浜市市民の森設置事業実施要綱」に基づく。市が土地を買い上げるのではなく、土地所有者と市が10年以上の契約を結び、緑地を保全しながら市民に公開する仕組みである。所有者の協力の上に成り立っている点が、公有地である公園との決定的な違いになる。歩けるからといって市の土地とは限らない。

都市農業振興基本法と生産緑地地区が農地を残している

都市の農地は、いまや積極的に残す対象として法律に位置づけられている。都市農業振興基本法(平成27年法律第14号、平成27年4月22日公布)は、市街地およびその周辺の地域で行われる農業を「都市農業」と定義し、その振興を国と地方公共団体の責務としている。農林水産省は都市農業の役割として、新鮮な農産物の供給、火災の延焼防止や避難場所となる防災空間、良好な景観の形成、雨水の保水や地下水の涵養といった国土・環境の保全、農作業体験と学習の場、農業への理解の醸成を挙げている。畑は野菜をつくる場所であると同時に、防災と環境と教育の装置でもあるという整理である。

市街化区域の農地を都市計画で残す仕組みが生産緑地地区である。国土交通省によれば、生産緑地地区に定められた農地は建築行為等が許可制で規制され、計画的に保全される。指定の面積要件はもともと一律500平方メートル以上であったが、平成29年6月施行の改正で、条例により300平方メートルまで引き下げられるようになった。同じ改正で農産物の加工施設や直売所、農家レストランの設置が認められ、都市計画決定から30年が経過する農地について買取り申出の時期を10年延ばす「特定生産緑地」の制度も創設された。

横浜市の生産緑地地区は、面積245.6ヘクタール、箇所数1,425か所である。平成4年11月13日の当初決定から令和7年12月25日の最終変更までの累積で、横浜市も面積要件を300平方メートル以上に引き下げている。特定生産緑地の指定は30年経過前に受ける必要があり、経過後は指定できない。市街化区域の農地が残るかどうかは、この期限の手続きに左右される。

農園も直売も、公式の制度名と所管がある

横浜市の市民農園は種類ごとに名前と根拠が異なる。土地所有者が開設する区画貸しの「認定市民菜園」は特定農地貸付法に基づく。農家が経営し指導する教室方式の農園は「栽培収穫体験ファーム」、児童・生徒向けは「環境学習農園」である。このほか、横浜農業協同組合が農家から土地を借りて開設・運営する「市民耕作園」がある。制度全般の所管はみどり環境局農政推進課である。募集時期と条件は開設者ごとに異なる。

地産地消の側にも公式の枠組みがある。みどり環境局農政部農業振興課が直売所・青空市等の支援、情報誌「はまふぅどナビ」の発行、地産地消の案内人「はまふぅどコンシェルジュ」の活動支援などを行っている。緑区役所は「とれたてみどり緑区直売所マップ」(令和5年4月現在の情報)を発行しており、区内の直売所を地図で確認できる。緑区で生産される梨「浜なし」は、神奈川県の「かながわの名産100選」に選ばれている。

農地が4番目に多い区に住むとは、これらの制度が生活圏の内側で動いているということである。

出典

情報確認日 2026-08-02。制度の内容、募集時期、面積・箇所数は変更されることがある。利用や申請を検討する場合は、みどり環境局農政推進課、北部農政事務所、緑区役所など各所管に直接確認されたい。市民の森・ふれあいの樹林は民有地を含み、所有者の協力によって公開されている。立入りの範囲やマナーは現地の掲示に従うこと。