市の「借金」は、なぜゼロにしない? 公共施設を未来の人も負担する理由
「借金は少ないほどいい」。家計なら、そう考える場面は多いでしょう。
では、市役所も借金を全部ゼロにすればいいのでしょうか。
自治体では、必ずしもそう単純ではありません。
たとえば、大きな公共施設を今年つくり、30年間使うとします。建設費を今年の税収だけで全額払えば、建設した年の市民が大きな負担をします。しかし、その施設を使うのは今年の市民だけではありません。10年後、20年後に暮らす人も利用します。
そこで自治体には、市債を発行して資金を調達し、長期間にわたって返済する考え方があります。
これは単に「お金が足りないから借りる」という側面だけではありません。長期間使われる公共施設などについて、利用する世代にも返済を通じて負担してもらう、という世代間負担の調整でもあります。
もちろん、だから借金はいくら増えてもよい、という意味ではありません。
借りれば将来の返済が必要です。返済額が大きくなりすぎれば、将来の行政サービスに使えるお金を圧迫します。そのため自治体には、「何のために借りるのか」と同時に「残高をどこまでに抑えるか」という管理が必要になります。
横浜市の現行中期計画では、市債を計画的に活用しながら、一般会計が対応する借入金残高を2兆9400億円以下にする財政目標を置いています。2026年度予算では、市債活用額は1305億円です。
ここで大切なのは、「今年1305億円借りる」と「借金が1305億円増える」は同じではないことです。年度中には新しい借入れだけでなく、過去の市債の返済も行われるからです。
市の借金を見るときに知りたいのは、金額の大きさだけではありません。
何をつくるための借金なのか。その施設は何年使われるのか。返済を含めた借入金残高はどう管理されているのか。
そこまで見ると、市債は「悪い借金か、良い借金か」という二択ではなく、現在と未来の市民が公共サービスの費用をどう分けるかという仕組みに見えてきます。