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横浜の災害時給水所は568か所。能登では断水が約5か月続いた


横浜市内の災害時給水所は合計568か所・基あり、市はおおむね半径1キロ圏で給水できる体制を敷いている。横浜の基幹管路の耐震適合率は令和4年度末で70.7%と全国平均42.3%を大きく上回るが、令和6年能登半島地震では最大約13.6万戸の断水が全面解消まで約5か月を要した。備えの要点は「水をどこでもらうか」より「何日分を自力でしのげるか」にある。

災害時給水所は市内568か所。まず自宅から1キロ圏を確認する

横浜市水道局が公表する「災害時給水所」は4種類ある。配水池23か所、災害用地下給水タンク134基、緊急給水栓358か所、耐震給水栓53か所(2024(令和6)年度末時点)で、合計568か所・基である。市は配水池と災害用地下給水タンクを合わせて、おおむね半径1キロ圏内で給水できるとしている。

自宅から最寄りを調べる方法は3つある。市水道局が18区別に発行する「災害時給水マップ」のPDF、市のGIS「はまピョンマップ」、そして地図アプリ「ロケスマ」の専用マップである。ロケスマ版は一度開くと地点情報が端末に保存されるため、通信が使えない状況でも検索できる。この「事前に一度開いておく」という一手間が、実際の発災時には効く。

地下タンクは134基でおおむね3日分。その後は緊急給水栓358か所へ

4種類は役割が違う。災害用地下給水タンクは小中学校や公園の地下にあり、手動ポンプで発災直後から使えるが、供給できるのはおおむね3日間である。その後は、地震に強い管に仮設蛇口を取り付ける緊急給水栓が引き継ぐ。耐震給水栓は特別な作業なしに使える屋外水飲み場型で、他の施設がない地域防災拠点に置かれている。

配水池は市民が1週間必要とする量に相当する約19万立方メートルの飲料水を確保できる。ただしこれは「市内23か所に貯めてある」水であり、蛇口まで自動で届く水ではない。断水とは「水がない」のではなく「水が動かない」状態だと理解しておきたい。

横浜の基幹管路耐震適合率は70.7%。全国平均42.3%を大きく上回る

国土交通省の調査(令和4年度末時点)によれば、基幹管路の耐震適合率の全国平均は42.3%である。同じ年度・同じ定義で政令指定都市を並べると、川崎市87.8%、名古屋市79.9%、さいたま市75.7%、神戸市75.4%、横浜市70.7%、大阪市66.4%、千葉市65.5%、福岡市57.1%、札幌市54.1%、京都市39.0%、広島市37.5%となる。横浜は全国平均の1.7倍近く、指定都市の中でも上位である。

耐震適合率とは、耐震管そのものに加え、埋設地盤の性状を勘案すれば耐震性があると評価できる管を含めた割合を指す。「耐震管の割合」より広い概念である点は誤解されやすい。横浜市水道局自身が公表する耐震管率(全口径)は令和5年度末で33%にとどまる。指標が違えば数字も違う。

3年で1.4ポイント。横浜の耐震化はすでに高原に入っている

同じ国土交通省調査の過去年度をたどると、横浜市の基幹管路耐震適合率は令和元年度末69.3%、令和3年度末70.1%、令和4年度末70.7%と推移している。3年で1.4ポイントの伸びである。全国平均は令和元年度末40.9%、令和2年度末40.7%、令和3年度末41.2%、令和4年度末42.3%だから、伸び幅では全国のほうが大きい。

これは横浜が停滞しているという話ではない。市の管路総延長は約9,300キロメートルあり、更新は年約100キロメートルのペースである。すでに7割を達成した水準からの上積みは、構造的に緩やかにならざるを得ない。市は送水管・配水本管などについて令和41年度末までに耐震管率100%を目指すとしている。裏を返せば、残る3割が数十年かけて更新される間、市民側の備えが埋めるべき隙間は残り続ける。

能登では最大13.6万戸が断水。全面解消まで約5か月かかった

令和6年能登半島地震では、内閣府の令和6年版防災白書によれば最大約136,440戸で断水が発生した。対象は石川県をはじめ新潟県、富山県、福井県、長野県、岐阜県の6県29市7町1村に及ぶ。国土交通省の資料では6県38事業者で最大約13.6万戸と整理されている。

復旧は長期化した。同年5月8日時点でも輪島市と珠洲市で約3,110戸の断水が続き、石川県内の断水が解消したのは5月31日である。発災は1月1日だから、約5か月を要した計算になる。建物倒壊地域等の691戸はこの時点でも除かれている。

もちろん能登半島は半島地形で道路寸断の影響が大きく、都市部の横浜にそのまま当てはまるわけではない。それでも「断水は数日で終わる」という前提が成り立たない場合があることは、事実として押さえておく価値がある。

3日分9リットルは最低ライン。WHOの目安は1日7.5〜15リットル

横浜市は飲料水について「1人1日3リットル、3日分で9リットル(できれば、1週間分)」を目安として示している。一方、WHOの緊急時技術ノートは、生存に必要な摂取量(飲料・食事)を1人1日2.5〜3リットル、基本的な衛生と調理を含めた最低必要量を7.5〜15リットルとしている。

この差が示すのは、3リットルは「死なないための水」だという事実である。手を洗い、食器をすすぎ、体を拭くための水は別に要る。飲料用の備蓄とは別に、風呂の残し湯や汲み置きで生活用水を確保しておく発想が要る。なお水道水の汲み置きは、清潔でフタのできる容器に口元まで満水にして冷暗所に置けば、冬場で1週間、夏場で3日程度が保存の目安とされている。

9リットルは約9キログラム。給水所まで往復できるかを一度試す

見落とされがちなのが運搬である。水は1リットルでおよそ1キログラムだから、3人家族の3日分27リットルは約27キログラムになる。災害時給水所には水を入れる容器が備えられていない。市水道局も、容器に加えて「運ぶためのカート」の用意を呼びかけている。

高齢者や小さな子どもがいる世帯では、往復の回数と一度に運べる重量が現実的な制約になる。マンションの高層階でエレベーターが止まれば、階段での運搬になる。備蓄が十分なら、そもそも取りに行く回数を減らせる。備蓄は「取りに行かなくて済む権利」を買う行為でもある。

携帯トイレ15個が要る。断水で本当に困るのは飲み水ではない

横浜市は携帯トイレについて「1人1日5回×3日分の15個」を目安としている。3人家族なら45個である。内閣府の「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」も1日の平均使用回数を5回とし、携帯トイレの備蓄は「まずは、3日分を目標に」としている。

衛生面の理由も明確である。同ガイドラインは、水が確保できても排水先が破損している場合は水洗トイレの使用を中止する必要があると指摘し、便由来の病原体が手や指を経由して口に入る糞口感染を重大な脅威として扱っている。断水時に最初に破綻するのはトイレと手洗いであり、そこから感染症が広がる。避難所のトイレ基数の目安は、発災当初が避難者50人当たり1基、長期化する場合は20人当たり1基、女性用と男性用の比は3対1とされている。

飲料水9リットルと携帯トイレ15個。この2つを揃えたうえで、自宅から最寄りの災害時給水所を地図で一度開いておく。ここまでが、568か所という数字を自分の生活に接続する作業である。

出典

情報確認日 2026-08-01。給水所の箇所数・耐震適合率はいずれも本文中に明記した年度時点の値であり、最新の状況は各機関の公表資料で確認されたい。本稿は特定の商品や工法を推奨するものではない。