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横浜市の空き家率8.68%、全国は13.8%。数字が低いことは安心を意味しない


横浜市の空き家率8.68%は全国13.8%より低い。実数は16万8600戸ある

令和5年住宅・土地統計調査によれば、横浜市の空き家率は8.68%、全国は13.8%である。ただし率が低いことと、個々の家が放置されずに済むかどうかは別の話である。令和5年12月施行の改正空家法により、倒壊寸前になる前の「管理不全空家等」の段階で固定資産税の住宅用地特例が外れる仕組みが動き出した。

横浜市の空き家率は8.68%。全国13.8%の6割ほどにとどまる

空き家率とは、総住宅数に占める空き家数の割合である。総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」(調査期日は令和5年10月1日)の住宅及び世帯に関する基本集計(令和6年9月25日公表)では、全国の総住宅数は6504万7千戸、空き家数は900万2千戸、空き家率は13.8%であった。都道府県別では神奈川県が9.8%である。

一方、横浜市が同じ調査に基づいて集計した市内の空き家数は16万8600戸、空き家率は8.68%である(第23回横浜市空家等対策協議会 資料1)。率だけを見れば横浜市は空き家の少ない都市である。それでも実数は16万戸を超える。率の低さは、市内に空き家が少数しかないことを意味しない。

全国の空き家率は30年で9.8%から13.8%へ。横浜は直近5年で下がった

統計局が示す全国の推移では、空き家率は平成5年(1993年)9.8%、平成15年(2003年)12.2%、平成30年(2018年)13.6%、令和5年(2023年)13.8%である。30年で4ポイント上昇し、上昇幅は近年やや鈍っている。

横浜市は逆の動きを見せる。空き家数は平成25年(2013年)17万8050戸、平成30年(2018年)17万8300戸(空き家率9.71%)と横ばいだったが、令和5年には16万8600戸(同8.68%)へ減少した。空き家率も1.03ポイント下がっている。同じ5年間で全国の空き家率が0.2ポイント上がったのとは逆方向である。横浜市では新築供給と人口の集積が続き、分母である総住宅数が増える一方で空き家の実数が減ったことが、率の低下につながったと読める。

空き家16万8600戸のうち10万5700戸は賃貸用。問題は別の5万1500戸

住宅・土地統計調査は空き家を四つに区分する。別荘などの「二次的住宅」、入居者募集中の「賃貸用の住宅」、買い手を探している「売却用の住宅」、そしてそのいずれでもない「その他の住宅」である。統計局の説明では「その他の住宅」は、転勤や入院などで居住世帯が長期にわたって不在の住宅や、取り壊すことになっている住宅などを指す。

横浜市の令和5年の内訳は、賃貸用の住宅10万5700戸、売却用の住宅1万戸、その他の住宅5万1500戸である。平成30年は賃貸用11万3400戸、売却用1万1800戸、その他の住宅5万1700戸だった。減ったのは主に賃貸用であり、その他の住宅はほぼ横ばいである。つまり空き家率の改善は賃貸市場の稼働が上がった結果であって、管理の担い手が見えにくい住宅が減ったわけではない。

全国でも同じ構図が見える。令和5年の内訳は賃貸用の住宅443万6千戸、売却用の住宅32万6千戸、二次的住宅38万4千戸、その他の住宅385万6千戸で、その他の住宅は総住宅数の5.9%を占める。国土交通省は、使用目的のない空家が1998年の182万戸から2018年に349万戸へ増え、2030年には470万戸になると見込んでいる。横浜市の資料では、市内の一戸建てのうち「その他の住宅」は1万9000戸、うち腐朽・破損ありが5500戸である。

こうした住宅の多くは、所有者の高齢化や相続をきっかけに生まれる。遠方に住む相続人が複数いる、施設に入所して自宅が空いた、といった事情は誰にでも起こりうる。

勧告で住宅用地特例は解除される。課税標準が6分の1から元に戻る

空家等対策の推進に関する特別措置法は、令和5年法律第50号による改正が令和5年12月13日に施行された。改正の柱の一つが「管理不全空家等」の新設である。同法第13条第1項は、適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態と認められる空家等を管理不全空家等とし、市町村長が指導できると定める。指導しても改善しない場合は同条第2項の勧告に進む。

より深刻な段階が同法第2条第2項の「特定空家等」である。そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態、著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にある空家等がこれに当たる。

税制上の効果は勧告の時点で生じる。国土交通省の改正概要は「勧告を受けた管理不全空家は、固定資産税の住宅用地特例(1/6等に減額)を解除」と明記している。根拠は地方税法第349条の3の2および第702条の3である。横浜市総務局主税部固定資産税課の説明では、住宅用地の本則課税標準額は、小規模住宅用地(敷地の200平方メートル以下の部分)が固定資産税で価格の6分の1、都市計画税で3分の1、一般住宅用地(200平方メートルを超える部分)が固定資産税で3分の1、都市計画税で3分の2である。勧告を受ければこの軽減が外れる。従来は特定空家等にならなければ外れなかった優遇が、その一歩手前で外れるようになった点が改正の実質である。

特定空家等については、同法第22条が助言・指導、勧告、命令、行政代執行の順に措置を定める。命令に違反した者は同法第30条第1項により50万円以下の過料、立入調査を拒み、妨げ、または忌避した者は同条第2項により20万円以下の過料に処せられる。代執行に要した費用は所有者等の負担となる。

全国の行政代執行は286件。制度は例外的にしか使われていない

国土交通省の施行状況調査(令和7年3月31日時点)によれば、空家等対策計画を策定済みの市区町村は1541団体で全体の88%である。平成27年度から令和6年度までの累計で、特定空家等に対する命令は551件、行政代執行は286件、略式代執行は592件だった。管理不全空家等に対する勧告は378件である。

横浜市の実績はさらに絞られる。令和7年12月末現在で、特定空家等は累計479件(うち改善290件)、管理不全空家等は累計14件(うち改善1件)である。強制的な手段が乱発されているわけではない。

横浜市は「横浜市空家等に係る適切な管理、措置等に関する条例」を令和3年8月1日に施行し、「横浜市空家等対策計画」に基づいて対策を進めている。所管は建築局住宅部住宅政策課、建築物の安全に関することは建築局建築指導部建築指導課建築安全担当である。

バンクーバーは空き家に3%課税。6年で空き家判定は58%減った

海外では、税で空き家に向き合う制度が先行している。カナダのバンクーバー市は2017年にEmpty Homes Tax(空き家税)を導入した。市の説明では、課税年(1月1日から12月31日)の間に6か月を超えて居住されていない住宅が対象で、税率は2017年から2019年が1%、2020年が1.25%、2021年以降は評価額の3%である。所有者には毎年の申告義務があり、申告しなければ空き家とみなされる。市は2024年12月の発表で、2017年から2023年にかけて空き家と判定された住宅が58%減少したこと、導入以来1億6980万ドル(原文表記は$169.8 million)がアフォーダブル住宅の取組に充てられたことを示している。

イギリスでは、長期の空き家に対するカウンシルタックスの割増が強化された。GOV.UKの2024年3月11日の発表によれば、2024年4月1日から、従来は空き家期間2年で適用されていた100%の割増を、12か月の時点で適用できるようになった。

日本の仕組みは税を上乗せするのではなく、住宅として使われている土地への軽減を外す設計であり、方向は同じでも手法が異なる。海外の税率をそのまま日本に当てはめることはできないが、「空いたままにしておくことに費用がかかる」という考え方が各国で共有されつつある点は押さえておいてよい。

相続登記は3年以内が義務。過去の相続も令和9年3月31日が期限である

空き家が動かせなくなる原因の多くは、名義が変わっていないことにある。法務省によれば、相続登記の申請は令和6年4月1日から義務化された。相続によって不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつその不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければならず、正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料の適用対象となる。令和6年4月1日より前に相続した不動産も対象で、令和9年3月31日までの登記が必要である(取得を知った日が令和6年4月以降の場合はその日から3年以内)。手続きを簡易に済ませる「相続人申告登記」も設けられた。

率が低い都市であっても、個別の家が抱える事情は率では解決しない。実家をどうするかを決めていない人にとって、期限が先に来るのは統計ではなく登記の方である。

出典

情報確認日 2026-08-01。本記事の数値は上記の各ページを実際に閲覧して確認した時点のものである。統計は調査年と定義(空き家率=総住宅数に占める空き家数の割合、空き家は「二次的住宅」「賃貸用の住宅」「売却用の住宅」「その他の住宅」の4区分)を必ず確認したうえで比較されたい。税額や個別の空家に対する措置の判断は所管の窓口(固定資産税は横浜市総務局主税部固定資産税課、空家等対策は横浜市建築局住宅部住宅政策課)に確認いただきたい。制度は改正されることがある。