「敷居が高い」は、高級な店のことじゃなかった?
高級なレストランを見て、「ちょっと敷居が高いな」と言う。
今では珍しくない使い方です。ところが、「敷居が高い」の本来の意味とされてきたものは、高級かどうかとは関係ありません。
文化庁の資料では、本来の意味とされてきた「敷居が高い」は、不義理や面目の立たないことがあって、その人の家などに行きにくいことを表します。
例えば、長い間連絡をしていない恩人の家。借りたものを返していない知人の家。入口が豪華だから入りにくいのではなく、自分に後ろめたさがあって入りにくい。こちらが元の感覚です。
では、「高級で入りにくい」は完全な誤用なのでしょうか。
言葉は実際に使われる中で変化します。令和元年度の「国語に関する世論調査」では、「高級過ぎたり、上品過ぎたりして、入りにくい」という意味を選んだ人が56.4%。本来の意味とされてきた「相手に不義理などをしてしまい、行きにくい」は29.0%でした。
つまり、調査時点では新しい意味の方が広く理解されていました。
ここで面白いのは、どちらかを知らない人を責めることではありません。同じ「敷居が高い」という言葉から、ある人は「高級店」を思い浮かべ、別の人は「不義理をした相手」を思い浮かべる可能性があることです。
誤解を避けたい場面なら、「高級で入りにくい」「久しぶりで顔を出しづらい」と具体的に言えば伝わります。
言葉の意味は辞書だけに閉じているのではなく、人が使うことで動いていきます。「敷居が高い」は、その変化を身近に観察できる言葉の一つです。