氷は水からできているのに、なぜ水に浮く?
コップの水に氷を入れると、氷は浮きます。
あまりにも見慣れた光景なので不思議に思いませんが、考えてみると少し変です。氷は水が固まったもの。それなのに、なぜ同じ水の中で沈まずに浮くのでしょう。
鍵になるのは「密度」です。
密度は、同じ体積の中にどれくらい物質が詰まっているかを表す考え方です。水の中にある物体は、水より密度が大きければ沈み、小さければ浮きやすくなります。
私たちが普段見る氷は、液体の水より密度が小さいため、水に浮きます。
では、なぜ凍ると密度が小さくなるのでしょう。
水分子は液体のときには動きながら比較的近くに集まっています。ところが通常の氷になると、水分子同士の結びつきによって、隙間を持つ規則的な構造をつくります。同じ量の水でも、氷になった方が少しかさが増えます。
同じ質量なのに体積が大きくなる。つまり、単位体積あたりに詰まっている量が減り、密度が小さくなります。それが、氷が水に浮く基本的な理由です。
この性質は、実は水の少し変わったところです。一般には、液体が固体になると粒子がより規則正しく詰まり、固体の方が密度が大きくなる物質が多くあります。JSTのScience Portalでも、「同じ物質なら固体は液体に沈むのが普通なのに、水は反対の性質を持つ」という身近な科学の不思議として紹介されています。
さらに、「氷なら何でも水に浮く」とまで言うと正確ではありません。北海道大学低温科学研究所の解説によると、高い圧力のもとでできる特殊な氷の中には、水より密度が大きく、水に浮かない種類もあります。私たちが冷凍庫や冬の池で見る通常の氷が、水に浮くのです。
冷たい飲み物の氷を見たら、「軽いから浮く」とだけ考えず、「凍ると分子の並び方が変わり、同じ量でも少しかさばるから密度が小さくなる」と考えてみてください。
毎日見るコップの中にも、物質の少し変わった性質が隠れています。