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横浜の中学校給食は2026年4月に全員給食へ。1食330円と喫食率54.2%が語るもの


横浜市立中学校の全員給食は、令和8(2026)年4月に全校で始まった。1食330円(ごはん・おかず・汁物・牛乳のフルセット)で、供給体制は生徒・教職員あわせて約81,000食分である。「横浜には中学校給食がない」という言い方は、制度上は令和3(2021)年4月に成立しなくなっている。

「横浜に中学校給食がない」は2021年に終わっている。誤解の正体

横浜市は令和3年3月23日の発表で、「本市ではこれまで中学校昼食としてハマ弁を5年間提供してきました」としたうえで、「ハマ弁の良さを活かしながら、令和3年度から学校給食法上の給食に位置付け、選択制の中学校給食(デリバリー型)を実施します」と明記した。つまり2021年4月の時点で、横浜市立中学校の昼食は学校給食法上の「給食」になっている。

近年の論点は「給食があるかないか」ではなく、「選択制か全員制か」という中身の問題だった。なお本稿では、家庭で弁当を用意することの是非は扱わない。制度がどう変わったかを事実で追う。

喫食率は38.6%から54.2%へ。選択制の3年間が示したもの

横浜市教育委員会の「中学校給食の取組状況について」(令和6年5月31日付資料)によれば、喫食率は令和5年4月で全体38.6%(1年生46.3%、2年生36.7%、3年生32.9%)、令和6年4月で全体44.8%(1年生51.9%、2年生45.7%、3年生37.2%)である。そして市の「横浜市中学校給食」ページは、令和7年4月の喫食率を54.2%としている。

3年間で38.6%→44.8%→54.2%と上がり続けたことになる。学年別ではどの年度も1年生が最も高く3年生が最も低く、入学時点の選択がその後も続く傾向がうかがえる。同資料では、先行的に取り組む「推進校」の喫食率が令和5年4月81.6%、令和6年4月81.0%と全体を大きく上回っていた。推進校は令和6年度に18区34校まで拡大されている。

半数が利用する状態でも、裏を返せば半数弱は利用していなかった。全員給食への移行は、選択制のままでは埋まらない差を制度側で解消する決定だったと読める。

給食費は1食330円。ハマ弁340円より10円下がった理由

金額の経緯は市会資料に残っている。「市第67号議案 横浜市学校給食費の管理に関する条例の一部改正について」(令和2年12月)では、ハマ弁の保護者負担額が340円、うち食材費が約270円で、差額に製造業者の人件費が含まれていたと説明されている。学校給食法上の給食に位置付ければ人件費相当を公費側で扱えるため、保護者負担を330円に下げつつ食材費を増やせる、という設計である。

現在の「横浜市学校給食費の管理に関する条例」第5条は、中学校及び義務教育学校の後期課程について「日額330円」を上限として定める。横浜市の学校給食費ページも、中学校の保護者負担額を「330円/食(フルセット(ごはん・おかず・汁物・牛乳))」と記載し、物価高騰分は市が補助するとしている。口座振替は年10回(5月〜8月、10月〜3月)、喫食月の翌月払いである。

つまり330円は食材費の実費に近い金額であり、調理や配送の費用ではない。この構造は学校給食法第11条に由来する。同条は施設設備費と運営費のうち政令で定めるものを設置者の負担とし、「前項に規定する経費以外の学校給食に要する経費(以下「学校給食費」という。)は、学校給食を受ける児童又は生徒の保護者の負担とする」と定めている。330円が食材相当分に見えるのは、法律がそう切り分けているからである。

小学校は0円、中学校は330円。同じ市内で分かれる負担

横浜市は令和8年4月から、市立小学校・義務教育学校(前期)・特別支援学校(小学部)の給食費について保護者負担額を0円とした。国の給食費負担軽減交付金に市費を上乗せする形での実質無償化である。令和8年3月31日までの給食費は対象外であることも市のページに明示されている。

一方で中学校段階の330円は継続している。無償化の議論を追うときは、どの学校段階の話かを必ず確認する必要がある。

全国の中学校の97.1%は完全給食。横浜は遅れていたのか

文部科学省「学校給食実施状況調査」(令和5年5月1日現在。結果の概要として公表されている最新年度は令和5年度)によれば、公立中学校の完全給食実施率は学校数ベースで97.1%(8,743校/9,007校)、生徒数ベースで97.8%(2,841,298人/2,904,284人)である。公立小学校は学校数99.5%、児童数99.9%とほぼ全校に行き渡っている。

ここで用語の定義が重要になる。同調査の用語解説は、完全給食を「給食内容がパン又は米飯(これらに準ずる小麦粉食品、米加工食品その他の食品を含む。)、ミルク及びおかずである給食」、補食給食を「完全給食以外の給食で、給食内容がミルク及びおかず等である給食」、ミルク給食を「給食内容がミルクのみである給食」と定めている。牛乳だけでも給食実施に数えられる区分があり、実施率という数字は方式の中身までは語らない。

神奈川県の中学校は90.4%。県内格差は横浜だけの話ではない

同じ調査で、神奈川県の公立中学校の完全給食実施率は学校数ベースで90.4%(367校/406校)、生徒数ベースで92.5%(183,123人/197,999人)である。全国の97.1%より6.7ポイント低い。小学校は学校数99.8%、児童数100.0%であり、差は中学校段階に集中している。

つまり「中学校給食が遅れている」という現象は横浜市固有ではなく、神奈川県全体の傾向として統計に表れていた。全国平均との差を1つの市の判断だけで説明するのは、統計の読み方として正確ではない。

フィンランドは1943年に無償化。日本の330円は何の対価か

海外の制度を一次情報で確認すると、負担の考え方の幅が見える。

フィンランド国家教育庁(Finnish National Agency for Education)の資料によれば、自治体の全児童生徒に無償給食を提供する法律が1943年に施行され、5年の移行期間を経て全国規模に到達した。同庁は現在も、就学前教育から後期中等教育までの子ども・若者が無償の学校給食を受けられるとしている。給食は栄養必要量の3分の1をカバーする設計である。

スウェーデンでは、食品庁(Livsmedelsverket)が「Sweden is unique in offering them for free」と述べ、2011年以降は学校法により学校給食が栄養的であることが法定されていると説明している。

イングランドは対象を限定する方式である。GOV.UKによれば、ユニバーサル・クレジット受給世帯では世帯年収が税引後・給付を除いて7,400ポンド未満という所得基準があり、他方でreception、year 1、year 2の児童は自動的に無償給食を受けられる。

全員無償(フィンランド、スウェーデン)、低学年のみ普遍で以降は所得要件(イングランド)、食材費相当を保護者負担とし小学校段階のみ実質無償化(横浜市)と、負担の線の引き方は国・自治体で大きく異なる。

給食1食でカルシウム450mg。1日の推奨量の50%を担う設計

栄養面の根拠も公的に定まっている。学校給食実施基準(令和3年文部科学省告示第10号、令和3年4月1日施行)の学校給食摂取基準では、12歳から14歳の生徒1人1回当たりの基準値として、エネルギー830kcal、たんぱく質13〜20%エネルギー、カルシウム450mg、鉄4.5mg、食塩相当量2.5g未満が示されている。

策定報告によれば、エネルギーは推定エネルギー必要量の3分の1、カルシウムは食事摂取基準の推奨量の50%、鉄は推奨量の40%、食塩相当量は目標量の3分の1未満という考え方で設定されている。エネルギーが3分の1なのに対し、カルシウムは50%、鉄は40%と高めに置かれている点が要点である。日常の食事で不足しやすい栄養素を、給食が意図的に多く担う設計になっている。

学校給食法第1条は、学校給食が「児童及び生徒の心身の健全な発達に資するものであり、かつ、児童及び生徒の食に関する正しい理解と適切な判断力を養う上で重要な役割を果たす」ものだと位置付ける。給食は栄養補給であると同時に、教育の手段として法定されている。

全員給食は約81,000食。汁物は2025年夏から先行して始まっていた

令和5年12月27日の市の発表によれば、令和8年度からの調理・配送等業務はA区分(28,000食程度/日)とB区分(53,000食程度/日)に分けられ、合計で約81,000食となる。A区分は令和8年度から令和22年度までの15年間(準備を含む委託契約期間は17年間)、B区分は令和8年度から令和12年度までの5年間の契約である。

また令和7年8月19日の発表では、調理製造事業者の新工場完成で製造体制が増強されたことを受け、夏休み明けから市内の中学校21校で食缶による汁物の提供を先行実施するとされた。全員給食は一斉に切り替わったのではなく、推進校での試行と汁物の先行実施を積み重ねた上で2026年4月に至っている。

出典

情報確認日 2026-08-01。給食費・実施率・栄養基準の数値は、上記の各ページを実際に開いて確認した記載に基づく。制度は改定されることがあるため、手続きや金額は必ず横浜市および文部科学省の最新ページで確認されたい。