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待機児童0人・保留児童1,256人 横浜市の保育を「1,552人だった年」と他都市から読み直す


横浜市の待機児童数は令和8年4月1日現在で0人、2年連続のゼロである。同じ日付で、保留児童は1,256人と公表されている。この2つの数字は矛盾していない。何を数え、何を数えていないかが違うだけである。

1,552人から0人へ 16年で動いた数字

出発点を確認しておきたい。厚生労働省「保育所関連状況取りまとめ(平成22年4月1日)」の資料5・資料6によれば、平成22年4月1日時点の横浜市の待機児童数は1,552人。川崎市1,076人、札幌市840人を上回り、全国の市区町村で最も多かった。当時の全国値は待機児童26,275人、保育所23,068か所、定員2,157,890人、利用児童数2,080,114人である。

直近はどうか。横浜市こども青少年局保育・教育部の記者発表(令和8年4月23日)によれば、令和8年4月1日現在の待機児童数は0人で、令和7年4月1日に続く2年連続のゼロ。令和6年4月1日は5人だった。保留児童(育児休業延長希望の方を除く)は令和6年4月1,691人、令和7年4月1,511人、令和8年4月1,256人と3年続けて減っている。

436か所・38,295人が、1,220か所・74,477人になった

数字が動いた背景には、単純に「箱」が増えたことがある。横浜市の資料(令和7年4月1日現在)に載る推移表では、保育所等の施設数と利用定員は平成22年度436か所・38,295人、平成25年度580か所・48,916人、平成30年度1,005か所・65,056人、令和2年度1,106か所・70,015人、令和5年度1,196か所・73,709人、令和6年度1,207か所・74,038人、令和7年度1,220か所・74,477人。15年で施設数は約2.8倍、定員は約1.9倍になった計算である。

ただし同じ表には「平成27年4月から保育所・認定こども園のほか、地域型保育(家庭的保育、小規模保育、事業所内保育)を含む」との注記がある。平成27年に対象範囲が広がっているため、H22とR7を直接比べるときはこの点を割り引いて読む必要がある。

なお、報道等で使われる「横浜方式」という呼称は、確認した横浜市の公式資料・公式ページには見当たらなかったため、本記事では用いない。市の資料に登場する固有の制度名は「横浜保育室」で、これは市が独自に設けた基準を満たし市の認定を受けて運営経費の助成を受ける認可外保育施設を指す。

待機児童0人の隣に並ぶ、保留児童2,991人という数字

定義の話に入る。横浜市の令和7年4月1日現在の資料には、申請者数74,523人、利用児童数71,532人と記載がある。差は2,991人。これが同時点の保留児童数(総数)にあたる。

この2,991人から待機児童0人にたどり着くまでの内訳も、同じ資料に区分ごとに示されている。育児休業延長希望1,480人、横浜保育室等入所数519人、育児休業延長許容147人、求職活動休止113人、特定保育所等のみの申込者など732人。合計すると2,991人になる。

つまり「待機児童ゼロ」は、申し込んで入れなかった人がゼロという意味ではない。国の調査要領で除外できるとされた区分に全員が当てはまった、という状態を指している。令和8年4月の1,256人という数字は、このうち育児休業延長希望を除いた人数として公表されているものである。

参考までに、定員に対する利用の詰まり具合も比べておく。横浜市の令和7年4月1日の利用児童数71,532人を利用定員74,477人で割ると約96.0%(本記事による計算)。こども家庭庁が公表する同日時点の全国の定員充足率は88.4%だから、横浜の枠は全国平均よりかなり埋まっている。空きの余裕は小さい。

「除外4類型」が線を引く場所 2017年3月に定義は広がった

この除外の枠組みは国が決めている。こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和7年4月1日)」は、除外4類型として(1)特定の保育所等のみ希望している者、(2)求職活動を休止している者、(3)育児休業中の者、(4)地方単独保育施策を利用している者を挙げ、次のように記している。

この除外4類型については、平成29年3月に、有識者会議の検討を踏まえ、市町村ごとの運用上のばらつきを絞り込む方向に統一・是正し、待機児童の定義が広くなる見直しを行った。

見直しは「狭くする」方向ではなく「広くする」方向だった。全国の待機児童数は平成29年4月26,081人、平成30年4月19,895人、令和7年4月2,254人と推移している。定義が広がった後も減り続けている、という読み方ができる。

横浜0・川崎0・相模原8、全国上位10に指定都市は入っていない

他都市と横に並べる。まず同じ基準日・同じ国基準で比べられる神奈川県内では、令和7年4月1日時点の待機児童数は横浜市0人、川崎市0人、相模原市8人。県全体は138人、施設2,823か所、定員182,474人である。

範囲を全国に広げると、こども家庭庁の同日時点の集計で待機児童数が多い市区町村の上位は大津市132人、西宮市76人、橿原市68人、四日市市56人、明石市56人、草津市48人、世田谷区47人、北谷町42人、町田市40人、近江八幡市40人。政令指定都市は1つも入っていない。全国の待機児童2,254人のうち、100人以上を抱えるのは1市のみである。

そうなると、指定都市同士を待機児童数で比べても差はほとんど出ない。意味を持つのは「数えていない側」の公表姿勢の違いのほうだ。大阪市は令和8年4月1日現在で待機児童0人・2年連続と発表し、利用児童数56,309人(前年比141人増)、令和7年度に1,151人分の受入枠を拡大したとしている。札幌市は令和8年4月1日現在で待機児童0人としたうえで、「特定の保育所等のみを希望し、入所していない児童数」578人、「幼稚園等における一時預かり・企業主導型保育事業を利用している児童数」716人を併記している。横浜市が保留児童という言葉で示しているものを、札幌市は区分名のまま出している。呼び方も切り出し方も自治体ごとに違う。

回答2,157人が語る保留児童の中身 育児休業中が80.9%

横浜市は「横浜市保育所等利用保留児童実態調査報告書」で、保留児童の家庭に直接アンケートを行っている。令和7年度調査は令和7年8月~9月に実施され、対象2,686人・回答2,157人・回答率80.3%。

結果を見ると、令和7年8月1日時点で「保護者が見ている」が79.0%(1,704人)、「認可以外の保育サービスを利用」が19.6%(422人)。保護者が見ている層の就労状況は、育児休業中80.9%(1,379人)、求職活動中9.8%(167人)、就労中4.1%(70人)だった。申請園数は平均4.6園・中央値3園で、1園のみを希望していた単願者は25.7%(389人)である。

育児休業中が8割を占めるという事実は、除外4類型のうち「育児休業中の者」が横浜の保留児童の主成分であることを裏づける。同時に、単願が4分の1いることは、空き枠の総量だけでは埋まらない需要のかたちがあることも示している。

出生数686,173人と有効求人倍率2.77倍 需要と供給の両側から

最後に、これから効いてくる数字を2つ。

需要側。厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況」によれば、令和6年の出生数は686,173人で、前年の727,288人から41,115人減った。合計特殊出生率は1.15(前年1.20)。全国の保育所等の利用児童数も令和7年4月1日時点で2,678,417人と前年より26,641人減っており、定員3,029,282人に対する充足率は88.4%まで下がっている。整備を増やす局面から、既存の枠をどう使うかの局面に移りつつある。

供給側。こども家庭庁の資料によれば、令和6年度に職員配置基準が見直され、4歳以上児は30対1から25対1へ、3歳児は20対1から15対1へ改善された。ただし「経過措置として当分の間は従前の基準により運営することも妨げない」とされている。1歳児の6対1から5対1への改善は「加速化プラン期間中の早期に」進めるとされる。基準が厚くなれば必要な保育士は増えるが、保育士の有効求人倍率は令和7年7月時点で2.77倍、全職種平均1.18倍の倍以上である。こども家庭庁の調査でも、待機児童を解消できなかった要因の最上位は「保育人材の確保が困難」44.1%だった。

枠は増えた。子どもは減っている。人は足りない。横浜市の待機児童0人という数字は、この3つの流れが交差する地点に立っている。数字の意味を決めるのは、その隣にどの数字を置くかである。

出典

情報確認日 2026-08-01。数値はいずれも各機関の公表資料に記載された値であり、基準日・年度・定義が異なるものを並べている箇所がある。待機児童数・保留児童数は自治体ごとに公表の区分が異なるため、単純な優劣の比較には使えない。最新の状況および入所の可否については、横浜市各区こども家庭支援課および各自治体の窓口で確認されたい。