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横浜市営地下鉄の初乗りは210円。公営9事業者と並べると見える位置


初乗り210円は9事業者中の中位。最安との差は30円

横浜市営地下鉄の初乗り運賃は、きっぷ・ICともに大人210円(小児110円)である。同じ日に各事業者の公式運賃表を確認すると、公営地下鉄9事業者の初乗りは東京都交通局の180円から京都市交通局の220円までの幅に収まり、横浜はその中ほどにある。以下、この210円がいつから続き、他都市とどう並び、地下鉄事業の費用構造がどうなっているかを公式資料の数字だけで並べる。

都営180円、京都220円。9事業者の初乗りは40円の幅

いずれも2026年8月1日時点で各事業者の公式運賃表・公式資料に載っていた大人の初乗り額である。

事業者初乗り(大人・きっぷ)小児対象距離適用開始日
東京都交通局 都営地下鉄180円(IC178円)90円(IC89円)1〜4km2019年10月1日
Osaka Metro190円100円3kmまで2023年4月1日
横浜市営地下鉄210円(IC210円)110円1区2019年10月1日
札幌市営地下鉄210円110円1区(3kmまで)※下記備考
仙台市地下鉄210円大人の半額(10円未満切上げ)1区2019年10月1日
名古屋市営地下鉄210円100円3kmまで2019年10月1日
神戸市営地下鉄210円110円1区2019年10月1日改正
福岡市地下鉄210円110円1区(3kmまで)令和元年10月1日現在
京都市営地下鉄220円110円1区(3kmまで)2025年10月1日

出典は上から順に東京都交通局Osaka Metro横浜市高速鉄道運賃条例施行規程札幌市交通局仙台市交通局名古屋市交通局神戸市交通局福岡市地下鉄京都市交通局の各運賃表・公式資料である。

9事業者中6つが210円に集まるのは偶然ではない。多くの公営地下鉄が2019年10月1日の消費税率引上げに合わせて同時に改定したためだ。端の2つでは、Osaka Metroが2023年4月1日に鉄道駅バリアフリー料金10円を加算して180円から190円へ、京都市は2025年10月1日適用の運賃で220円となっている。

ただしこれは「1区」だけの比較である。横浜は12区560円(IC555円)まで上がるが、名古屋は5区340円が上限で、区間の刻み方も距離帯も事業者ごとに違う。

現行運賃は2019年10月1日から。本格改定は1997年が最後

「じわじわ値上がりしている」という印象は少なくないが、記録はそうなっていない。横浜市はFAQ「市営地下鉄の運賃が、現在の運賃になったのはいつからですか。」で、令和元年10月1日から現在の運賃であり、その前の改定は2014年6月1日だったと明記している。

さらに遡ると、横浜市営交通経営審議会 第2回資料の「地下鉄の運賃体系」に、初乗りが平成9年9月1日に200円、令和元年10月1日に210円と記載されている。同資料は「運賃の本改定は平成9年度が最後。その後は消費税率引き上げに伴う運賃改定のみ。」とも書く。初乗りは29年で200円から210円へ10円動いた計算になる。

横浜市交通局「あゆみ」によれば、地下鉄の開業は1972年12月16日、伊勢佐木長者町〜上大岡間である。交通局「地下鉄事業」によれば、現在のブルーラインはあざみ野〜湘南台の40.4km・32駅、グリーンラインは中山〜日吉の13.0km・10駅で、令和4年度決算の1日平均乗車人員はそれぞれ478,524人、126,693人である。

ブルーラインの建設費は7,287億円。1キロ177億円が残る

なぜこの水準に落ち着くのか。答えの半分は開業前に投じた金額にある。横浜市営交通経営審議会 第1回資料の「地下鉄開業の歩み」には、ブルーラインの建設費が計7,287億円・41.1km・1キロあたり177億円、グリーンラインが2,412億円・13.1km・1キロあたり184億円と記載されている。2路線で約9,700億円である。この資産は乗客が増えても減っても変わらず、減価償却費と支払利息の形で毎年の費用に姿を変える。

総務省自治財政局公営企業経営室「公営交通事業について」も地下鉄事業の特徴として「減価償却費と支払利息が経常費用の約半数を占めるなど、固定資産形成に伴う費用の割合が大きい」と述べている。バスのように車両を減らして費用を絞る調整が効きにくい。

減価償却費等は年210億円。乗客が減っても消えない費用

横浜の実額を見る。横浜市交通局「令和6年度決算(速報)」によれば、高速鉄道事業の令和6年度は乗車料収入390.85億円、減価償却費等210.78億円、経常損益52.91億円の黒字、企業債残高3,006.63億円。令和5年度は同375.51億円、204.22億円、41.27億円の黒字だった。

収入の半分を超える額が、毎年、過去の建設投資の目減り分として費用に立つ。収入が伸びても減価償却費が膨らむのは車両更新や老朽化対策の投資が続くためで、令和7年度決算(速報)では乗車料収入403.40億円に対し減価償却費等218.52億円である。

企業債残高は、第1回審議会資料のグラフで平成15年度の約4,915億円から令和2年度の約3,262億円まで縮小し、令和6年度末は3,006.63億円である。新線建設が1999年の湘南台延伸と2008年のグリーンライン開業で一区切りついたことが効いている。

一般会計補助金は20億円。繰出基準は建設改良費の35%

地方公営企業は独立採算が原則である。仙台市交通局の「地下鉄運賃の基礎知識」は、地下鉄運賃が「対キロ区間制」であり、地方自治法第225条の「公の施設の使用料」に当たるため金額が市の条例でも定められると説明している。横浜も同じで、金額は横浜市高速鉄道運賃条例施行規程に置かれる。

ただし完全な自力採算ではない。総務省「令和8年度の地方公営企業繰出金について(通知)」には「地下高速鉄道の建設に要する経費」の項があり、繰出しの基準額は「当該建設改良費に35%を乗じて得た額とする」と定められている。建設費の一定割合は、はじめから一般会計が持つ設計なのである。

横浜の一般会計補助金は令和5年度21.91億円、令和6年度20.44億円、令和7年度(速報)19.82億円。乗車料収入390億円台に対する20億円前後をどう読むかは、読み手で分かれるだろう。

初乗りを事業者自身が問題にした例もある。大阪市が民営化方針をまとめた「市営交通が目指すもの」は「民間鉄道事業者に比べ割高感のある初乗り運賃」と記し、平成26年4月に初乗りを200円から190円へ引き下げたと説明している。

ロンドンは1日8.90ポンドで頭打ち。横浜も740円で止まる

日本の地下鉄は乗った距離に比例して払う制度だが、これは世界共通ではない。ロンドン交通局(TfL)のAdult rate prices 2026によれば、ゾーン1のペイ・アズ・ユー・ゴーの1日上限額は8.90ポンド、月曜から日曜までの週上限額は44.70ポンドである。何度乗ってもこれを超えない。TfLの運賃改定に関する発表によれば、2026年3月1日に地下鉄・鉄道運賃が改定された一方、上限額は2027年3月まで据え置かれる。

横浜も、この発想を一部導入済みである。横浜市「クレジットカードやデビットカード等のタッチ決済による乗車サービス」によれば、2024年12月4日に全40駅でタッチ決済を開始し、同一カード番号かつ同一媒体で乗車した場合の1日の上限運賃は740円である。上限サービスは2025年3月12日から始まった。740円は市営地下鉄1日乗車券(大人740円・小児370円)と同額で、券を買わなくても同じ上限に収まる。

ベルリンは4.00ユーロで120分。ソウルは10キロ1,550ウォン

ベルリン交通局(BVG)のSingle ticketによれば、運賃区域ABの片道券は大人4.00ユーロ、有効時間は120分で、その間は乗り換え自由である。距離ではなく時間とゾーンで課金する方式だ。1日券(AB)は11.20ユーロで24時間乗り放題である。区域はAが都心のSバーン環状線内、Bが環状線外から市境まで、Cが周辺約15kmとポツダムまでとBVGのゾーン説明にある。

ソウルは日本に近い距離比例制だが、基本距離が長い。ソウル交通公社の運賃案内によれば、交通カード利用の大人基本運賃は10kmまで1,550ウォン、10〜50kmは5kmごとに100ウォン、50km超は8kmごとに100ウォンが加算される。1回券は100ウォン高い。ソウル特別市の公表資料によれば、1,550ウォンは2025年6月28日からの額で、それ以前は1,400ウォンだった。

横浜が初乗り210円で3km前後、ソウルが1,550ウォンで10kmまで。為替換算では比べられないが、「基本料金でどこまで行けるか」の設計が違うことは読み取れる。ゾーン制・時間制・上限制のどれを採るかで、同じ運賃額でも実感は変わる。横浜の740円上限は、距離比例制の上に上限制を重ねた形と言える。

出典

情報確認日 2026-08-01。運賃・料金は改定される。乗車前に各事業者の公式サイトで最新額を確認されたい。海外の運賃は現地通貨で記載しており、為替換算は行っていない。令和7年度の決算数値は監査委員審査前の速報値である。