渡航費も授業料も市が負担。横浜市立高の留学20人枠、締切は9月9日
市が渡航費と授業料を負担。20人枠の締切は9月9日である
広報よこはま令和8年8月号が伝えた留学プログラムは、市立高校長期留学プログラム「はまっこ留学 flight」である。カナダ・ブリティッシュコロンビア州の公立学区の高校へ約10か月間、20名程度を派遣し、渡航費・ホームステイ費・授業料・海外現地保険を横浜市が負担する。応募締切は令和8年9月9日(水曜)23時59分で、夏休みが実質的な準備期間になる。
推薦が要る制度である。締切9月9日までに在籍校へ相談する必要がある
横浜市教育委員会事務局学校経営支援課の事業ページは、応募締切を「令和8年9月9日(水曜)23時59分まで」と記している。募集要項の表記も「令和8年9月9日(水)23時59分」で一致し、広報よこはま令和8年8月号の該当記事も「9月9日まで」としている。
注意したいのは、締切までに個人で書類を出せば済む制度ではない点だ。募集要項の応募資格の第1項は「令和9年度、横浜市立高等学校に在籍見込みの生徒であり、学校長が推薦する者」である。学校長の推薦が前提である以上、在籍校への相談が締切前に必要になる。8月は学校が長期休業中であり、実務上の余裕は見た目の日数より短い。
なお正式名称は、事業ページでは「市立高校長期留学プログラム『はまっこ留学 flight』」、募集要項の表題では「令和8年度横浜市立高校長期留学プログラム はまっこ留学flight ≪2期生≫」と表記されている。渡航期間は「令和9年8月から約10か月間」である。
市が負担するのは4項目。パスポート代やビザ代は自己負担である
「全額負担」は何もかも無料という意味ではない。募集要項の経費の項は、横浜市が負担する費用を「留学時の渡航費、ホームステイ費、授業料、海外現地保険」と限定して列挙している。
一方、応募者が負担する費用は「パスポート取得費用、ビザ申請料・ビザ取得関連費用、上記以外の保険料、健康診断費用、予防接種費用、制服代、教材・教具費、通学交通費、課外活動、旅行費用等」と明記されている。個々の金額は募集要項に記載がないため、本稿では総額を示さない。ただし留学費用の中で最も大きい渡航費・授業料・滞在費が公費で賄われることは、家計にとって決定的な差である。
横浜市には、この長期留学とは別に高校生留学補助事業「はまっこ留学support」もある。市内在住・在学の高校生が自ら選んだ留学先の費用の一部を補助する制度で、令和8年度の募集期間は「令和8年5月8日(金曜日)10時00分から令和8年6月7日(日曜日)23時59分まで」と記載されており、情報確認日時点では受付が終了している。補助上限額の記載はない。
募集は20人程度。対象に中学3年生が含まれる点が見落とされやすい
募集人数は「20名程度」。対象は、事業ページによれば令和9年度に横浜市立高等学校に在籍見込みの1年生・2年生に加えて、「横浜サイエンスフロンティア高校附属中学校3年生及び南高校附属中学校3年生」も含む。高校生向けと聞いて中学3年生の家庭が読み飛ばしやすいが、附属中学校の3年生は対象である。
英語力の要件は「英検準2級以上又は同等の英語力があること」。文部科学省の令和6年度「英語教育実施状況調査」では、高校3年生でCEFR A2レベル(英検準2級)相当以上の英語力を有すると思われる生徒の割合は51.6%である。準2級相当は高校3年生の約半数が到達する水準であり、特別に高い壁ではない。
中学生向けは市内で1泊2日。9月末ごろから受付開始予定とされる
広報よこはま8月号は、市立中学生を対象とした「はまっこ留学体験」も並記している。市内に住む外国籍の人の家などで1泊2日のホームステイを体験する事業で、実施は11月下旬の2日間、募集人数は40人、「9月末ごろから受付開始予定」とされている。
この事業について、市ウェブサイト上の事業ページの名称は「はまっこ留学」であり、広報よこはまの「はまっこ留学体験」と表記が異なる。同ページには令和8年度の募集要項も申込期限も掲載されていない。したがって中学生向けの申込期限は、本稿の情報確認日時点では確定できない。案内は家庭と学校の連絡アプリで配信される旨が記されており、学校からの配信を待つのが確実である。
東京都の同種事業は自己負担150万円。横浜の設計は例外的である
比較対象として、東京都教育委員会の次世代リーダー育成道場がある。令和8年度の第15期研修生募集案内によれば、対象は都立高等学校・都立中学校・都立中等教育学校の生徒、派遣人数は150人以内、Aコースはオーストラリア又はニュージーランドへ令和9年1月から約11か月間、Bコースはアメリカ合衆国又はカナダへ令和9年8月から約11か月間である。
費用については「受講料 80 万円を納付する」と定められ、さらに「受講料以外にも諸経費等(事前研修に要する交通費は除く。)として、70 万円程度の経費を要するが、当該経費も自己負担とする」と記されている。自己負担の合計は約150万円規模になる。同時に「経済的な理由により納付が困難な場合や多子世帯の場合には、受講料の減免制度があり」とも明記されており、負担軽減の仕組みは用意されている。
規模では東京都が150人、横浜市が20人程度と大きく異なるが、費用負担の設計は逆になっている。渡航費・授業料・滞在費を自治体が持つ横浜市の方式は、東京都の同種事業と比べれば例外的である。広報よこはま8月号は「県内では横浜だけ」と表現している。
日本人留学生は91,054人。過去最多の2018年度より約2万4千人少ない
日本学生支援機構(JASSO)の調査結果によれば、2024年度に海外への留学を開始した日本人留学生数は91,054人で、前年度から1,875人(2.1%)増えた。ただし過去最多だった2018年度の115,146人には約2万4千人届いていない。回復は進んでいるが、まだ以前の水準ではない。
高校生に限ると差はさらに大きい。文部科学省の高等学校等における国際交流等の状況(令和5年度調査)では、3か月以上の留学は3,174人(平成29年度4,076人)、3か月未満の研修旅行は31,711人(平成29年度42,793人)である。同資料は「高校生の留学生数は約 3.5 万人(下記①②の計)となり、過去最高となったコロナ禍前(平成 29 年度)の約 4.7 万人に対しては約 1 万 2 千人少ない」とまとめている。
かつて「若者の内向き志向」が語られたが、統計上は増加へ転じている。他方で、3か月以上の留学をする高校生は全国で3千人台にとどまる。
Erasmus+は2024年に約150万人。生徒は学校経由でしか応募できない
欧州連合のErasmus+は、2024年に約150万人が学習・研修の移動に参加し、同年の予算は47億ユーロだったと公表している。
初等中等教育段階の生徒向けの枠組みでは、公式の案内が個人単位の移動を短期(最長1か月)と長期(1か月から1年)に分けている。費用は「The EU grant supports your travel and subsistence costs, and is managed by your school.」とされ、渡航費と滞在費を助成する点は横浜市の設計と発想が近い。応募は生徒個人ではなく学校が行う仕組みで、機会に恵まれない参加者の包摂を支える手段も設けられていると記されている。学校の推薦を前提とする横浜市の方式は、国際的に見て特殊な運用ではない。
留学は長いほど効果的とされる。根拠は7万人規模の大学生調査
期間の長さは効果に関係するのか。文部科学省の「日本人の海外留学の効果測定に関する調査研究」報告書は、先行研究の検討として「渡航期間が長いほど留学の効果が高まること」を挙げている。一方で満足度の分析からは「短期留学と長期留学(1年程度)で満足度が高く、中期留学(3〜6ヶ月程度)で満足度が低くなっている」という傾向も示されている。
ただし読み方には注意が必要だ。この調査の定量分析の対象は、海外留学支援制度に参加した学生など約7万人分のデータであり、高校生ではなく大学生である。そのまま高校生に当てはめられる知見ではない。それでも、1年程度の留学の満足度が高いという結果は、約10か月というはまっこ留学 flightの設計を考えるうえで参考になる。
問い合わせ先は横浜市教育委員会事務局学校経営支援課(電話045-671-3494)である。
出典
- 横浜市「広報よこはま2026年8月号 市立中学生・高校生向けの留学プログラム」 https://www.city.yokohama.lg.jp/koyoko/2026/0930/0930-03/index.html (一次情報。制度の存在・募集人数・募集期間・問い合わせ先の根拠)
- 横浜市教育委員会「市立高校長期留学プログラム『はまっこ留学 flight』」 https://www.city.yokohama.lg.jp/kosodate-kyoiku/kyoiku/sesaku/global/ichiritu-ryugaku.html (一次情報。正式名称・対象・定員・派遣先・期間・応募締切の根拠)
- 横浜市「令和8年度横浜市立高校長期留学プログラム はまっこ留学flight ≪2期生≫ 募集要項」 https://www.city.yokohama.lg.jp/kosodate-kyoiku/kyoiku/sesaku/global/ichiritu-ryugaku.files/2026_boshuyoko.pdf (一次情報。応募資格・経費負担の内訳・応募締切の根拠)
- 横浜市教育委員会「高校生留学補助事業『はまっこ留学support』」 https://www.city.yokohama.lg.jp/kosodate-kyoiku/kyoiku/sesaku/global/support.html (一次情報。別制度の対象と令和8年度募集期間の根拠)
- 横浜市教育委員会「はまっこ留学」 https://www.city.yokohama.lg.jp/kosodate-kyoiku/kyoiku/sesaku/global/20250131hamaryugaku.html (一次情報。中学生向け事業のページ名称と申込期限が未掲載であることの根拠)
- 東京都教育委員会「令和8年度 次世代リーダー育成道場 第15期研修生募集案内」 https://www.ryu.kyoiku-kensyu.metro.tokyo.lg.jp/pdf/R8_bosyu2.pdf (一次情報。他自治体の派遣人数・派遣先・期間・自己負担額・減免制度の根拠)
- 日本学生支援機構(JASSO)「『2024(令和6)年度日本人学生留学状況調査』『2025(令和7)年度外国人留学生在籍状況調査』結果の公表について」 https://www.jasso.go.jp/about/press/jp2026052901.html (一次情報。日本人留学生数91,054人と2018年度115,146人の根拠)
- 文部科学省「『日本人学生の海外留学状況』及び『外国人留学生の在籍状況調査』について」 https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/1412692_00003.htm (一次情報。91,054人の再確認)
- 文部科学省「高等学校等における国際交流等の状況についてお知らせします(令和7年3月28日)」 https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/koukousei/20250331-mext_kyokoku_01.pdf (一次情報。高校生の留学者数の推移の根拠)
- 文部科学省「令和6年度『英語教育実施状況調査』の結果について」 https://www.mext.go.jp/content/20250623-mxt-kyouiku01-000042425_1.pdf (一次情報。CEFR A2相当以上51.6%等の根拠)
- 文部科学省「日本人の海外留学の効果測定に関する調査研究 報告書」 https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/__icsFiles/afieldfile/2018/11/22/1411310_1.pdf (一次情報。留学期間と効果・満足度の関係の根拠)
- European Commission “Almost 1.5 million people went on an Erasmus+ mobility in 2024, according to latest report” https://erasmus-plus.ec.europa.eu/whats-new/news/almost-15-million-people-went-on-an-erasmus-mobility-in-2024-according-to-latest-report (一次情報。2024年の参加者数と予算の根拠)
- European Commission “Pupil mobility – Erasmus+” https://erasmus-plus.ec.europa.eu/opportunities/individuals/pupils (一次情報。生徒の移動期間区分・費用助成・学校経由の応募方式の根拠)
情報確認日 2026-08-01。本稿の数値・期限は上記の各公式ページを実際に開いて確認した記載に基づく。募集内容は変更される場合があるため、応募前に必ず横浜市教育委員会事務局学校経営支援課の事業ページと募集要項の最新版を確認されたい。