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横浜市の借金は2兆9492億円。政令市7市の指標で位置を確かめる


基準内だが政令市では重い側。数字は会計区分で1兆円変わる

横浜市が「税で返す必要のある借入金」は令和6年度末で2兆9,492億円であり、ピークの平成21年度末から約6,000億円減っている。健全化判断比率は国の早期健全化基準を大きく下回る一方、政令指定都市の中では低い方ではない。数字は会計区分ごとに別物なので、混ぜずに読む必要がある。

残高は2兆9492億円。ピークから約6000億円減った水準である

横浜市が中心に置いているのは「一般会計が対応する借入金」という指標である。市の財政用語集はこれを「一般会計の市債残高に加え、特別会計・公営企業会計の市債残高・外郭団体借入金残高のうち、各会計の事業収入等で返済する分以外(=市税等で返済する分)のこと」と定義している。事業収入ではなく市税で返す部分に絞った数字である。

横浜市監査委員による令和6年度の決算審査意見書によれば、この残高は令和2年度末3兆1,543億円、令和5年度末3兆0,386億円、令和6年度末2兆9,492億円と推移している。市のワンストップ財政情報も令和6年度決算を2兆9,492億円、前年度より894億円減少と記載しており、二つの資料で一致する。

横浜市会に提出された市の財政状況の説明資料は、この借入金のピークを平成21年度末の3兆5,540億円、平成25年度末を3兆3,382億円としている。ピークからは約6,000億円縮んだ。

なお会計の範囲を広げた「全会計市債残高」は別の数字である。市財政局のIR資料(2026年5月)は2024年度を3兆9,350億円としている。同じ「市債残高」でも、どの会計を含むかで1兆円前後変わる。

市民1人あたり約78万円。ただし会計区分で数字は変わる

1人あたりに直すと感覚がつかみやすい。ただしここが最も誤読の起きやすいところで、分子に何を置くかで金額が変わる。

市が公表する数字は二つある。一つは市財政局IR資料の「市民一人当たり市債残高(普通会計)」で、2024年度は60万円。もう一つは財政ビジョンが管理指標に据えた「市民1人当たり借入金残高」で、一般会計が対応する借入金の令和3年度末残高3兆1,504億円に対応する84万円である。財政ビジョンは2040年度末もこの水準に抑えることを長期の目安としている。

参考までに、令和6年度末の2兆9,492億円を、市が公表する推計人口3,759,615人(2026年6月1日現在)で単純に割ると約78万円になる。残高と人口の時点がずれた概算だが、84万円の管理水準の内側にある。60万円と78万円と84万円は矛盾ではなく、会計区分と時点が違うだけである。

実質公債費比率は9.2%。早期健全化基準25%の半分以下である

健全化判断比率は、地方公共団体の財政の健全化に関する法律に基づいて毎年度公表される4指標である。うち借金の重さを見るのが実質公債費比率と将来負担比率で、横浜市は前者を「1年間の収入総額に対する、1年間で支払った借入金返済額などの割合」、後者を「将来市が支払う借入金返済額などの割合」と説明している。

横浜市の令和6年度決算は実質公債費比率9.2%、将来負担比率114.9%。実質赤字比率と連結実質赤字比率は赤字が生じておらず「-」である。早期健全化基準は順に11.25%、16.25%、25.0%、400.0%で、いずれも基準を下回る。

この比率には別の意味もある。総務省の解説では、実質公債費比率18%未満の団体は協議により地方債を発行できるが、18%以上になると許可が必要となり、25%以上では一般単独事業債等の発行が制限され、35%以上では一般公共事業等の起債ができなくなる。9.2%は、こうした制限線から距離のある水準である。

将来負担比率は114.9%。大阪市は該当なしで差は大きい

同じ令和6年度決算、同じ指標で政令指定都市を並べると、位置がはっきりする。各市が公表した数値は次のとおりである。

実質公債費比率将来負担比率
大阪市0.1%-(該当なし)
札幌市3.2%22.2%
名古屋市6.4%84.2%
福岡市7.7%58.8%
川崎市8.4%111.4%
横浜市9.2%114.9%
京都市12.0%132.0%
早期健全化基準25.0%400.0%

大阪市の将来負担比率が「-」なのは、充当可能財源等が将来負担額を上回ったためと同市が説明している。同市の実質公債費比率は平成19年度の11.8%から令和6年度の0.1%まで下がった。一方で横浜市は、この7市では京都市に次いで負担が重い側にある。横浜市自身も財政解説で、令和5年度決算での20政令指定都市比較として実質公債費比率が「20都市の中で16番目」、将来負担比率が「15番目」と記載している。

基準との距離で見れば余裕がある。都市間で見れば真ん中より借入が重い側にある。この二つは両立する。

横浜市は交付税の不交付団体ではない。隣の川崎市が不交付

「大都市だから国に頼っていない」という言い方は横浜市には当てはまらない。神奈川県の発表によれば、令和7年度の普通交付税で県内の不交付団体は川崎市など9団体であり、横浜市はこの中にない。政令指定都市で不交付団体なのは隣の川崎市の方である。

地方交付税は、横浜市の用語集の言葉を借りれば「地域ごとの状況の違いによって生じる地方税収の差などを調整するために、国税のうち、所得税、法人税、酒税、消費税、たばこ税それぞれの一定割合の額を、国から財源が足りない地方公共団体に交付するもの」である。交付を受けている事実は、標準的な行政に必要な額に市税収入が届いていないことを意味する。市債の元利償還の一部が交付税で措置される仕組みも、これと結びついている。

臨時財政対策債は令和7年度に発行ゼロ。創設以来初である

市債は一律に「借金」ではない。横浜市の財政解説は、市債を「工事にかかる負担を世代間で公平に分けるために」発行するものと説明する。財務省の解説でも、地方債は原則として「公営企業の経費や建設事業費の財源を調達する場合等、地方財政法第5条各号に掲げる場合においてのみ発行できる」とされる。何十年も使う施設の費用を、その年の住民だけに負担させない。これが建設地方債の考え方である。

これに対し臨時財政対策債は性格が異なる。財務省は、地方財政計画上の通常収支の不足を補塡するために発行される特例債で、地方財政法第33条の5の2に基づくものと説明する。横浜市は「国が地方交付税として交付するお金で足りない分を、地方公共団体が代わりに借り入れる地方債のこと(平成13年度~)」と定義し、元金と利子は後から地方交付税で補われるとしている。施設が残る建設地方債と違い、こちらは残るものがない。

その臨時財政対策債は、令和7年度地方財政対策で発行額ゼロとなった。総務省の資料は前年度から4,544億円の皆減であり、平成13年度の制度創設以来初めてゼロになったと記している。市債残高を読むときは、この臨財債分をどう扱うかで印象が変わる。

ドイツ連邦政府の上限は0.35%。州には構造的借入を認めない

借金に歯止めをかける制度は国ごとに違う。ドイツは基本法(憲法)に「債務ブレーキ」を置いた。ドイツ連邦銀行の説明では、連邦政府の構造的な新規借入は国内総生産の0.35%が上限で、州政府には構造的な借入の余地が認められていない。ドイツ連邦財務省によれば、この規定は基本法第115条にあり、2025年3月25日に改正版が発効している。日本は借入額そのものに憲法上の上限を課さず、返済負担の比率が一定水準を超えたときに起債を制限する。上限を先に決めるドイツ型と、負担の重さを測って事後的に制御する日本型。優劣を断ずる材料はないが、横浜市の9.2%が何との距離を測った数字なのかは、並べると見えやすい。

破綻処理も対照的である。米国の連邦裁判所の解説によれば、連邦破産法第9章は自治体の再建手続で、申立てには州法等による明示的な授権が必要となる。自治体の資産を換価して債権者に配当する規定はなく、第904条により裁判所は自治体の政治的・行政的権限や財産・収入に干渉できない。日本には自治体を対象とする破産手続はなく、健全化判断比率による早期是正が制度の中心にある。横浜市の市債は、市の公表によればムーディーズ社からA1(安定的)の格付を得ており、根拠として地方自治体に関する日本の強固な制度的枠組みが挙げられている。制度の枠組み自体が評価に入る点が、日本の地方債の特徴である。

読み違いを防ぐ約束は3つ。区分と年度と基準の距離である

第一に、会計区分をそろえる。一般会計が対応する借入金2兆9,492億円と全会計市債残高3兆9,350億円は別物である。第二に、年度をそろえる。他都市比較は令和6年度決算どうしで並べないと意味がない。第三に、基準との距離と都市間の位置は分けて扱う。横浜市は早期健全化基準からは距離があり、政令市の中では借入が重い側にある。どちらか一方だけを取り出すと、財政の姿は歪んで見える。

出典

情報確認日 2026-08-02。掲載した数値は上記の各公表資料に記載されたものであり、公表後の修正・更新により変わることがある。最新の状況は各機関の原典を確認されたい。本記事は財政運営の是非を評価するものではない。