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横浜港は世界70位。308万TEUの数字が示す構造の変化


横浜港の2024年のコンテナ取扱個数は3,075,369TEU、世界順位は70位である。1980年の13位、1990年の11位から順位は大きく下がったが、取扱量は1980年の約4.3倍に増えた。順位低下と量の減少は別の現象である。

1980年の神戸は世界4位。横浜は13位だった

国土交通省の「世界の港湾別コンテナ取扱個数ランキング」(単位・万TEU)によると、1980年の世界上位は1位ニューヨーク194.7万TEU、2位ロッテルダム190.1万TEU、3位香港146.5万TEUで、4位に神戸145.6万TEUが入っていた。同じ表で横浜は13位72.2万TEU、東京は18位63.2万TEU、名古屋は46位20.6万TEUである。原資料は「CONTAINERISATION INTERNATIONAL YEARBOOK 1982」と明記されている。

1990年も日本の港は上位に残っていた。国土交通省港湾局の参考資料(令和8年1月21日)によれば、1990年の世界1位はシンガポール522万TEU、2位香港510万TEU、3位ロッテルダム367万TEUで、神戸が5位260万TEU、横浜が11位165万TEU、東京が13位156万TEUである。

2024年の横浜は70位。取扱量は1980年の4倍に増えている

同じ参考資料の2024年(海外港湾は速報値)では、横浜は70位308万TEUである。順位は1980年の13位から57位分下がった。

ここで注意すべきなのは、取扱量は減っていない点である。横浜は1980年の72.2万TEUから2024年の308万TEUへ約4.3倍に増え、1990年の165万TEUと比べても約1.9倍である。順位が下がったのは横浜が縮んだからではなく、世界の他港がそれ以上の速度で伸びたからである。「横浜港が衰退して取扱量が減った」という理解は、公式統計と一致しない。

日本の他港も同じ構図にある。2024年の世界順位は東京45位470万TEU、横浜70位308万TEU、神戸75位277万TEU、名古屋76位276万TEU、大阪87位232万TEUである。神戸は1990年の5位260万TEUから、量を維持したまま順位だけが動いた。

上海は5,151万TEU。横浜との差は16倍である

では他港はどれだけ伸びたのか。2024年(速報値)の世界上位は1位上海5,151万TEU、2位シンガポール4,112万TEU、3位寧波-舟山3,931万TEU、4位深圳3,338万TEU、5位青島3,087万TEUで、上位5港のうち4港が中国の港である。

横浜の308万TEUと上海の5,151万TEUには約16.7倍の差がある。日本の主要5港(東京・横浜・神戸・名古屋・大阪)の2024年の合計は15,619,295TEU、約1,562万TEUで、5港を足しても上海1港の約3割にとどまる。桁が違うとはこういう意味である。

背景にあるのは中国の生産規模とアジア域内の物流の集中である。港の設備や運営の巧拙よりも、背後にどれだけの生産と消費があるかが取扱量を決める。1980年に日本の港が上位にいたのも、当時の日本経済の規模ゆえである。

国内2位は3,075,369TEU。東京港との差は162万TEU

国内の位置も同じ定義でそろえる。国土交通省「港湾別コンテナ取扱貨物量」の2024年速報値(単位TEU、合計は外貿と内貿の合算)では次のとおりである。

1位 東京 4,700,678TEU(外貿4,169,322、内貿531,356) 2位 横浜 3,075,369TEU(外貿2,755,210、内貿320,159) 3位 神戸 2,771,879TEU(外貿2,133,121、内貿638,758) 4位 名古屋 2,755,491TEU(外貿2,588,364、内貿167,127) 5位 大阪 2,315,878TEU(外貿2,024,908、内貿290,970)

横浜は国内2位で、東京港との差は約162万TEU、3位神戸との差は約30万TEUと、2位から5位は接近している。港ごとの性格も数字に出る。名古屋は内貿167,127TEUと少なく外貿に特化し、神戸は内貿638,758TEUと国内最大級で西日本の内航ネットワークの結節点である。横浜の外貿比率は約9割にのぼる。

2025年の内貿は369,330TEUで過去最多。国内輸送が動いた

横浜市の令和7年(2025年)横浜港統計速報では、コンテナ取扱個数の総数は3,182,607TEU(前年比103.5%)、内訳は外貿2,813,277TEU(同102.1%)、内貿369,330TEU(同115.4%)で、市は内貿を「過去最多」と記している。3年連続で300万個を超え、直近10年で最多となった。取扱貨物量の総数は103,464,784トン(同102.2%)である。

内貿の15.4%増は市民生活にも関わる。トラック運転者の時間外労働規制を背景に長距離陸送を海上輸送へ切り替える動きが進んでおり、その受け皿が機能していることを示す。

釜山港の積替は1,227万TEU。うち172万TEUが日本発着

港湾政策で重要なのがトランシップ(積替)である。日本の地方港から出た貨物が国内の国際戦略港湾を経由せず、海外の港で北米・欧州向けの大型船に積み替えられる流れが定着してきた。

国土交通省港湾局が関税・外国為替等審議会関税分科会に提出した資料(令和6年10月10日)によると、2021年の釜山港のトランシップ貨物は合計1,227万TEUで、内訳は中国389万TEU(32%)、日本172万TEU(14%)、アメリカ165万TEU(13%)である。日本発着は中国に次ぐ2位で、横浜港1港の年間取扱量の半分を超える規模の貨物が韓国の港をハブとして使っている計算になる。

この構造に対し、国は「集貨」(東南アジア等からの広域集貨、内航フェリー・RORO航路の活用)、「創貨」(物流施設の立地支援)、「競争力強化」(大水深ターミナル整備、DX・GX推進)の3本柱で対応している。横浜港の令和6年のトランシップコンテナは25万個で前年比66.4%増と、政策の方向に沿う動きが出ている。

横浜港の基幹航路は16航路。目標は18航路である

ここは用語が紛らわしいので正確に整理しておく。「国際戦略港湾」は港湾法上の港湾の種類である。国土交通省によれば、平成23年4月の港湾法改正で「港湾の種類について『国際戦略港湾』を追加する等の見直し」が行われ、あわせて港湾運営会社制度が創設された。2025年4月1日現在、国際戦略港湾は5港湾である。

一方「国際コンテナ戦略港湾」は政策上の選定名称で、平成22年(2010年)8月に京浜港および阪神港が選定された。京浜港は東京港・川崎港・横浜港を指す呼称である。つまり京浜港そのものが港湾法上の一つの港なのではなく、3港がそれぞれ国際戦略港湾であり、政策上まとめて京浜港として扱われている。港湾運営会社としては、横浜港と川崎港のコンテナターミナルを一体運営する横浜川崎国際港湾株式会社が平成28年3月4日に指定された。

政策の核心は基幹航路の維持・拡大にある。基幹航路は北米・欧州を結ぶ長距離の主要航路で、大型船が直接寄港するかどうかがその港の使い勝手を決める。国土交通省港湾局の検討委員会に提出された横浜港・川崎港の資料(2026年1月)によれば、横浜港の航路数は2025年12月末現在で合計95航路、うち基幹航路は16航路であり、令和10年度末の目標は18航路とされている。同資料は横浜・川崎計でコンテナ貨物量3,400,000TEU、国際トランシップ200,000TEU、国際フィーダー370,000TEUという目標値も示す。

基幹航路が減れば輸出企業は貨物を海外の港で積み替える必要が生じ、日数とコストが増える。目標が「量」だけでなく「航路数」でも設定されているのは、そのためである。

輸入1位はLNG566万トン。港は市民の電気とつながる

令和7年の横浜港統計速報の品目別データでは、輸入の上位はLNG(液化天然ガス)5,667,953トン、原油2,665,484トン、石炭2,632,780トン、電気機械2,563,902トン、製造食品2,076,566トンで、上位3品目がエネルギー資源である。

つまり横浜港は、コンテナの港である以前に首都圏の電気とガスの入口である。港が止まればまず影響が出るのは輸入雑貨ではなくエネルギーと食品であり、輸入5位の製造食品も食卓との距離の近さを示す。輸出側は完成自動車11,347,326トンが最大で、自動車部品4,892,572トン、産業機械2,689,896トンが続き、上位2品目が自動車関連である点は県内製造業の雇用と直結する。横浜市は横浜港を1859(安政6)年に開港した「我が国初の国際貿易港のひとつ」と位置づけている。

順位が70位であることは、この港が市民生活に果たす役割の大きさとは別の話である。世界順位は世界経済の重心を映す指標であって、港の機能や必要性を測る指標ではない。読むべきは順位ではなく、取扱量の推移、外貿と内貿の内訳、基幹航路の数、そして何が運ばれているかである。

出典

情報確認日 2026-08-02。本記事の数値はすべて上記の公式資料に記載された値であり、2回の独立した取得で一致したもののみを採用している。世界ランキングの海外港湾分および国内の2024年値は速報値であり、確定値で改定される場合がある。年次・単位・外貿内貿の別が異なる数値は相互に比較できないため、比較は同一年・同一定義の範囲にとどめている。